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舞台「Defiled」感想 ー愛情と狂気の狭間ー

 

 

戸塚祥太さん、勝村政信さんの2人芝居「Defiled」を観劇してきました。
以下、5月11日マチネソワレを観劇した感想です。感情のままざっくりと書いたのでネタバレ有り、いろいろ抜け有りとごちゃごちゃしています。

 

 

 

 

 

 

ずっとずっと興味があったつか作品、錦織さん演出以外での戸塚さんの舞台は想像以上に後味の悪い話でした。

純粋ゆえの愛情。ゆえの狂気。いや、狂気なんだけど、あきらかに狂ってるように見えるんだけどたぶんハリーは狂ってない。本当にただただ純粋に本を愛し図書館を愛しカード目録が人生に必要なピースになっていたんだと思う。
とにかくハリーは見てる側からすれば突飛で納得理解出来ないことが彼にとっては絶対的な正義で自分の命より大事なものだった。交渉に入った刑事にも観客である私たちもわからないこと。なんでそんなにカード目録にこだわるの?と思ってしまうのだけど答えはきっと簡単で「それが僕の使命だから」
だけど刑事さん側からしたらこの終わり方は辛いよなと思ってました………なんとか良い案が思いついてハリーも納得してくれたと思ったら自分へプレゼントといって渡してくれた本のせいでハリーは自分の正義に反することだと気付いてしまうし、ハリーもハリーで爆発を起こせず自分の使命を果たせなかったと絶望しながら死んでいく。この後の刑事さんのことを考えるとやるせなさが凄いです。コミカルなシーンも多々あってラスト2人で玄関へ向かって行った時はすごくホッとしていたので、その後ハリーが戻ってきた所で思考が追いつかなくなってました。最初は「どちらが相手を手玉に取ってるんだろう?」とか考えてたはずなのにそこら辺の思考が一気に飛んで行きました。しかも新刊図書のことを忘れてたからって………それは後から考えればいいだろうと思ってしまうんだけど、ハリーにとってはそれではいけないんだよなぁ。
あとこれは他のお客さんが議論してる声も聞こえていたのですが最後の発砲はハリー自身によるものなのか第三者によるものだったのか気になりました。個人的には第三者による発砲かなと思うんですけど、可能なら近くの席で確認したかった。


マチネとソワレで印象というか芝居の雰囲気が違うシーンがかなり多いように感じた。
マチネのハリーは本当に純粋に本を愛していて、図書館の素晴らしさもカード目録の必要性も刑事さんに伝えようとしている感じがあった。たぶんハリーは20代後半の青年なんだけど、10代の少年のような純粋な心を持ってる。そんなハリーを刑事は必死に理解しよう分かりあおうとしていたし、カード目録を刑事の家のガレージに置いておくという案が出たときは刑事も嬉しそうに感じた。クスッと笑えるシーンが多かった。
ソワレのハリーはなんだか愛情というよりも執着のようなものを凄く感じた。マチネではあんなに目をキラキラさせて話していたシーンでもソワレは1人感情が高ぶっていてキラキラというよりは興奮して瞳孔が開ききってる。自分が革命家になることを望んでいる。図書館のことよりもそのことの方が全面に出てきているように見えて、刑事はハリーに対してイラつきを隠せていないように感じた。マチネ以上に怒鳴り合ったり怒りの感情を露わにするシーンが多くてまさに演技バトル。ものすごい熱量だった。


戸塚さんはやはり体軸がしっかりしていて身体能力の高さを感じました。ひとつひとつの動作が綺麗。椅子から棚へ飛び移ったりテーブルへ飛び乗ったりってのをさらっとやってのけるので美しかった。飛び降りるのも飛び乗るのも足音がほとんど立ってなかったんですけど普通は足音しますよね…?
「寝取られ宗介」なんかもそうですけど戸塚さんは純粋ゆえ愛ゆえに狂気を孕んだ役が似合いますね。美しい薔薇には棘があるじゃないですけど、触れたいけど触れたらすぐどこかえ消えてしまうし自分は怪我をするみたいな危うさがずっと漂っていて、だからこそラストは言葉にならなかったです。
勝村さんは舞台で拝見したのは初めてだったんですがとてもチャーミングな刑事さんでした。最初のハウッちゃうくだりとズボンのくだりが特に好きです(笑)命を大切にする思いが客席にはこんなに伝わってくるのに、それが1番近くにいるハリーには一切届いてないのが悲しくて仕方なかった。怒鳴った時の迫力がすごくて、音が跳ね返ってくるんじゃないかってくらい声が響いていて凄かったです。ぜひ1度コメディー作品の勝村さんを見て話の展開とか何も気にせずケラケラ笑ってみたい。


マチネ観劇後に初見の衝撃を消化しきれぬまま勢いでパンフレットを買ってカフェで開いた。パンフレットにきちんとブックカバーがかけられていることに気づいて、なんだかそのブックカバーにハリーの本へ対する愛情や執着みたいなものを見てしまったような気がして心の中で思いっきり「うわぁ……」と声に出してました。
まだまだ続く公演、無事に大千穐楽まで駆け抜けてほしいです。